日本語と英語の壁:違いを知れば超えられる

「英語脳」vs.「日本語脳」の著者、熊谷高幸のブログ

第1回:同じで違う英語と日本語

英語を話せますか?

 まわりの日本人にこう聞いてみると、一番多い答が「いいえ」で、二番が「多少は」で、三番が「はい」だと思います。そして、答える人数は、一番から三番にかけてどんどん減っていくはずです。では、なぜ、こんなにも英語を話せない人が多いのかというと、それは私たちが日本人だからです。

 日本語と英語は文字や発音だけでなく、文の形があまりにも違います。その根底には文を作るときの発想の違いがあります。日本人の発想は日本語でできているので、それをなかなか英語に変換できないのです。私はこのことを伝えたくて、12年前から3冊の本を出版してきました。下の画像は、その中の一番最後に出した本です。しかし、その後、補足したいことや、新たな視点などが出てきたので、このブログを始めました(ただし、このブログは、本を読んでいなくても一応、理解できるようにできています)。

英語と日本語は同じ違う

 今回、補足して述べておきたい最初のことは、日本語と英語は違うけれど、実は、それ以上に、同じだということです。

 そこで、まず考えておきたいのは、そもそも私たちが使う言語にはどのような働きがあるのか、ということです。これについて、私は発達心理学を専門にしてきたのでハッキリいえることですが、言語とは、物に名前を付けることができ、「いま・ここ」にないものを表すことができる働きを持つものです。そして、この一番大切なことばの働きを、日本語も英語も全く同じように持っています。

 人間以外の動物、たとえば犬は、その場の出来事にはよく反応しますが、きのうの事を特に考えたり、あしたの事を伝えることはできません。また、その場にない物を飼い主に求めることはできません。ところが、人間は、ことばがあるおかげで、それができるのです。このような、魔法のようなことばの働きを、日本人は日本語の形で獲得しました。こう考えると、日本人が英語で話そうとする時にも、日本語で身に付けた方法をそのままそこに当てはめようとするのはもっともなことなのです。たとえば、以下のような、日本語文とその英訳を比較してみます。

 

 明日は英語のテストがあります。

 I have an English test tomorrow.

 

 両方とも、今ではなく、あしたの、また、多くの場合、話しているその場でなく学校で起きることを表しています。この点では、日本語も英語も、全く同じ、ことばの働きを使っているのです。しかし、訳してみると、上記のとおり、見かけは、かなり違うものになってしまいます。

 日本語も英語も世界を表そうとする基本戦略は同じです。しかし、その具体的な方法に違いがあります。そこで、どこがどのように違うかを突き合わせていく必要があるのですが、実は、日本人は自分たちが普段使っている日本語の仕組みにあまり気づいていないのです。そのため、日本語の形で蓄えてきた自分たちの思いのどこをどのように切り替えていけば英語になるのか、がわからなくなるのです。

 この点は、上記の自著でも十分に書けていなかったところがあります。そこで、このブログでは、この問題も含め、私自身の中で日々生まれてくる、日本語と英語についての思いを、今後も日記風に書き綴っていきたいと思います。